21.01.19

マスコミ 

記者への接触は“マジカルラブリー型”と“おいでやすこが型”どちらが正解か?〜M−1グランプリ2020から考えるコミュニケーションデザイン〜

12月20日にテレビ朝日系列で放送された漫才の祭典「M−1グランプリ2020」にかんして、主要WEBメディアに掲載された論考が一通り出揃いました。

主要な記事は一通り読みましたが、私がもっとも感銘を受けたのはコラムニストの堀井憲一郎さんが現代ビジネスに寄稿した「M-1グランプリ、午後8時40分に起きた「革命」に気づいていますか?」という記事です。
 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78685  

この記事の内容を簡単にまとめると、今年のM-1は和牛まで連綿と続いていた“正統派漫才”というよりも、インパクトあるテンション高めの芸を披露するコンビが多く(マジカルラブリーはその典型例)、それゆえに大会そのものの雰囲気がまったく異なるものに変容したということが書かれています。

特に中盤に登場したおいでやすこがとマジカルラブリーの2つのコンビが大きな笑いを誘ってスタジオの雰囲気を形作ったことにより、後半のコンビを見ている時間が退屈になったということが述べられています。

堀井氏については、2019年の審査員松本人志氏の点数に着目した「M-1グランプリ」の論考もたいへんおもしろかったですが、先述したように2020年に目を向けたテーマは「大会の雰囲気そのものと時間経過」でした。

※参考記事
「M-1の審査」で改めてわかる、松本人志「評価能力」の凄まじさ(堀井 憲一郎)
 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69508  

さて、そんな放送後にさまざまなメディアでレビュー記事が出され、Twitterのトレンドにも入るほど様々なコミュニケーションを生むという意味で、もはやそれ自体が立派なメディアと定義してもよい「M-1グランプリ」ですが、この番組をPRの観点で見ると、おもしろい発見があります。

ここ数年と優勝したコンビを振り返ってみましょう。

2020年 マジカルラブリー
2019年 ミルクボーイ ◎
2018年 霜降り明星 ◎
2017年 とろサーモン ◎
2016年 銀シャリ

◎がなにを意味するかわかるでしょうか。

◎をつけたコンビは決勝戦に初進出して、そのまま初優勝したコンビを表しています。

この決勝戦初出場、初優勝がここ数年の「M-1グランプリ」のトレンドでした。

特に、昨年史上最高得点を獲得して優勝したミルクボーイについては、審査員視聴者ともに「なんだこのコンビは…!」という衝撃をもって迎え入れられたのではないでしょうか。

今年、そのポジションを担ったのは、ともにピン芸人として活躍していたコンビのおいでやすこがです。

この「いきなり出てきてものすごいインパクトを与える」というコミュニケーションデザイン(相手に対してどんな感情や体験をしてもらうかを設計すること。広告業界の人がよく使う単語です)。

ここ数年の「M-1グランプリ」で結果を残すコンビは必ずこのカテゴリに当てはまっており、今年優勝したマジカルラブリーはその系譜の“例外”といえる存在でした。

マジカルラブリーと言えば、2017年の決勝戦で審査員の上沼恵美子氏に酷評され、決勝戦で最下位となってしまったことがあまりにも有名です。

そんな彼らは、2020年に雪辱を晴らすかたちで優勝しました。

つまり、そこにはマジカルラブリーの二人がM-1でリベンジするという「物語」がありました。

…が、断言します。

一度審査員から低評価を下され、再度ネタを披露して逆転勝利を狙うマジカルラブリー型のコミュニケーションデザインは正直あまりおすすめできません。

特にPR戦略の観点では、記者や編集者との最初の接触がとても重要なのです。

最初に名刺交換したときに、凡庸なサービスで、凡庸な事業内容の説明をしてしまうと、それ以降、プレゼン資料を修正したところで大きなインパクトを与えることはかなり難しいのです。

初回のデートでその男性のことを“ない”と思った場合、女性は二回目のデートの誘いを断るのです。

その理由を簡単に言えば「Before」をすでに見ているあとに「After」を見ても、「Before」の印象を引きずってしまいがちだから、と説明できるでしょう。

たとえば、和牛は「M-1グランプリ」の決勝進出コンビの常連でしたが、ついに優勝できませんでした。

それは和牛に対するイメージが当初の「おもしろい」というものから「ベテラン感」「慣れてる」「どういうネタが想像がつく」と、審査員や視聴者から多かれ少なかれ思われてしまい、二人に対する目が肥えてしまったことでインパクトという大事な評価要素を失ったからにほかなりません。

ここまで私が縷々述べてきたことをまとめるならば、

<コミュニケーションは第一回目で決まる>

とまとめることができるでしょう。

自分の不足点を添削してもらい、何回もブラッシュアップしていく…という赤ペン先生的なコミュニケーションは多忙な記者の前では正しくないコミュニケーション戦略なのです。

ミルクボーイや霜降り明星、とろサーモン、そして今年決勝初出場で高得点を残したおいでやすこがのようなネタを披露していたのか?

この記事を読んで興味を持たれた方はぜひチェックしてみてください。