21.02.2

マスコミ 

社長がSNS発信・顔出しすることの功罪

 

【社長がSNS発信・顔出しすることの功罪】

 

“音声版Twitter”とも呼ばれるシリコンバレー発の新サービス「clubhouse」が現在スタートアップ業界で携わる方を中心に話題になっています。

 

clubhouseの最大の特徴は、かつてのmixiのように完全招待制であること。

 

さらに、一人のユーザーが招待できる人数は2人と限られているため、その“招待枠”欲しさにTwitterやFacebookでは「clubhouseに招待してください」と投稿する人が目立っています。

 

結果、現時点ではclubhouseを利用している人は“選ばれし民”となっており、それゆえにTwitterなどほかのSNSでclubhouseのスクリーンショットを貼り付けて自分がclubhouseに入れていることと、そこで繰り広げられている議論に自分は参加できていることをアピールしているような投稿が目立っています。

 

さて、そんなSNSでのマウンティングは人間の性なので不可避であるという点は横に置いておいて、昨今はclubhouseを含めたSNS上において顔出しして自社の情報や自身の業界にかんする情報を発信する経営者は少なくありません。

 

むしろ、現代はSNSで経営者が発信することが求められている時代と言っても過言ではないでしょう。

 

その理由は、端的に自社のPRにつながるから…と言われています。

 

また、SNSでの発信内容がきっかけでテレビや雑誌などのマスコミからの取材が入るケースも増えています。

 

しかし、「有名になること」自体が目的になってしまうと、本来の自社のサービスに相乗効果をもたらすのではなく、むしろ悪い状況をもたらす危険性があります。

 

経済評論家の勝間和代氏の著書『有名人になること』(ディスカバー携書)では、自著がベストセラーになったことがきっかけで「情熱大陸」(TBS系)に出演し、講演会やテレビ出演で引っ張りだこになり、いわゆる「有名人」になった彼女に対し、後に訪れる悲劇が赤裸々に詳述されています。

 

 

同書では、有名人になることは「システムに組み込まれること」と書かれています。

 

システムに組み込まれると、有名であっても、いや有名であるがゆえに自由な身動きができなくなります。

 

すでに私が縷々お話してきたように、メディアのほしいコメント、ほしいストーリーに応えてくれる人だけがメディアに出演し続けることができます。

 

そのため、経営者の場合、メディアに出たとしても自分に都合よく自社のアピールをできるわけでもないし、ましてや自社の事業にシナジーを起こせるのか微妙なケースも少なくないのです。特に、勝間氏の著書にも書かれているように、それはメディア出演が増えるほど顕著です。

 

さて、冒頭の話に戻ります。

 

メディアやSNSで発信することの功罪について今回はご説明したいと思います。

 

ただし、SNSと一口で言っても発信する場所によってそれがもたらす効果は大きく変わってくるため、それぞれのSNSの使い分けについてお話しする、といったほうが正確な表現になります。

 

結論を言います。

 

Twitter、Facebook、Instagram…この中で、Twitterだけは扱い方が難しいです。

 

そのためTwitterアカウントを経営者が運用するのはかなり慎重になったほうがよいです。

 

なぜか。

 

理由は3つあります。

 

一つは、Twitterは拡散性の高さゆえに投稿内容が誤解され、かつ誤配される可能性が極めて高いからです。

 

Twitterの最大の特徴はリツイート機能にあります。

 

このリツイート機能により、あらゆるSNSの中でもっとも拡散力があるため広くツイートが読まれる可能性があります。

 

一方、実名で真面目に投稿する経営者は、真面目に投稿しているにもかかわらず、ツイート内容が誤解されたまま拡散して批判に晒される可能性がほかのSNSに比べてかなり高いのです。

 

特にTwitterは昔からアカウントを持って発信を続けている人が先行者利益を得ている傾向があり、いわゆるアルファツイッタラーと呼ばれるインフルエンサーが(誤解も含めて)リプライすると、そこに追従する彼のフォロワーたちからの一斉攻撃にあうリスクがあります。

 

具体例で示します。

 

あるスタートアップ企業のコンサルティングをしてる方が、1年ほど前にTwitterでフォロワーが数万人いるアルファツイッタラーに絡まれ(リプライを飛ばされ)、彼の質問に答えなければならない状況になりました。

 

むろん、彼はこれを無視してもよかったのですが、Twitterは逃げ場のないアリーナのようなもので、アカウントを消しても“逃げた”と言われ、無視をしても“逃げた”と言われます。

 

結果的に、彼はその質問に真摯に答えたことでそのアルファツイッタラーの批判は的外れだったのですが、アルファツイッタラーの声が大きいために、その男性はツイッター上での評価が下がり、結果的に本業でも信頼を失うことになってしまったのです。

 

なお、その問いただされた内容については「学歴問題」と「職歴問題」とだけ記しておきます。彼は関西の大学を卒業後、アメリカの大学院で哲学を専攻し、もともとテニュアを目指していた方でした。

 

ちなみに、Twitterでは学歴と職歴が突っ込まれやすいので、これに自身がない人はするべきではありません。

 

あまりに理不尽かもしれませんが、Twitterではそのようなことが往々にして発生しやすいのです。

 

二点目は、あなたよりも圧倒的に知識や経験、学力や学歴のある人が跋扈している世界であるため“プロ”を名乗りにくくなってしまう点です。また、その“攻撃”に耐えられるほど武装できるケースは少ないからです。

 

Twitterは投稿が140文字以内であることに加え、気軽に他人の投稿を引用リツイートしたり、リプライを飛ばせるため、相対的にほかのSNSに比べて“議論”になることがとても多いです。

 

そして、その最大の問題が往々にしてTwitterの議論は“ガチ”であることです。

 

メディアクラブはPRのプロを標榜をしているので、PRの例で説明しましょう。

 

仮にある人物が「PRのプロ」を名乗っていたとします。

 

彼のTwitterアカウントに対し、同じくPRのプロを僭称する人物が「日本とアメリカのPR手法の違いについてあなたは知っていますか?」「PR手法の古典である『戦争広告代理店』は読んでいますか?」「電通が博報堂と大きく差をつけるきっかけとなった1980年代のPR施策を知っていますか?」といった質問が飛んだときに答えられなかった場合、その人物は「PRのプロ」として二流、三流と思われる可能性が極めて高いのです。

 

ここで私が言いたいのは、そういったハイレベルな人が跋扈しているのでしっかり勉強しましょう、という話ではありません。

 

そうではなく、Twitterに力を入れるのではなく、クライアントなど向き合うべき人だけ向き合いましょうということです。

 

そのうえで安全に発信すること。それが肝要なのです。

 

その意味で昨今はオンラインサロンやFacebookグループ、メルマガなど「閉じられた場所」で発信をする経営者が増えているのは偶然ではありません。

 

自分が知識面でも、経験面でも負ける相手がいる場所でわざわざ戦う必要はありません。

 

Twitterで発信することはそれと真逆のアクションになるということをお伝えしておきます。

 

最後は、Twitterはフローメディアであるため、アーカイブスを追って読んでもらいにくいため、発信方法としてのコストパフォーマンスが悪いということです。

 

Twitterはタイムラインのスピードが早く、また“今”に特化したアウトプットがしやすいUIになっているため、せっかくよいことをつぶやいても、タイムラインの下に流れていき、3日も経てばそれを読んでくれる人はいなくなってしまうという特徴があります。

 

ストック性という意味では、ブログやYoutubeを活用するほうがよく、Twitterはその告知用のメディアと捉えたほうが、あなたが発信した情報が無駄にならなくなります。

 

ここまでの話をまとめます。

 

Twitterは“今ここ”を発信するメディアであるため常に発信する必要があり、資産性がない。

 

さらに、その投稿内容についてもプロたちの厳しい視線に晒されやすく、アルファツイッタラーたちからの攻撃に遭いやすいため、「防御力」のある人でない限り積極的に取り組むべきではない、ということです。

 

なお、ここでの「防御力」とは、その人の専門性や経験、学歴や職歴などあらゆるステータスを意味します。

 

以上、なんでもかんでも発信せよと号令がかかる“アウトプット至上主義”の時代に、無知を晒さないように警鐘を鳴らす寄稿でした。